そう....あれは忘れもしない平成8年10月7日。私はいつもの様に子供たち4頭とお店で仕事をしていました。
夕方近くになった時、昨日ムーニーが食べたおやつのホネが、上顎の歯と歯の間にピッタリ挟まってしまっていたのを発見!
私でも簡単にとってあげられるのは承知でしたが、大げさな私はかかりつけの動物病院に行くことにしました。
店には120センチの柵で囲ってある駐車場へ出られる犬専用出口がありますが、ちょっとの間なので出入り口のドアの鍵を閉めずにムーニーだけを連れ、他の3頭は留守番させて出かけました。
病院で順番待ちをしていると、なにやらバンバンっと花火らしき音が!!
季節外れのこの花火は多摩川の河原で上がっていた巨人軍優勝祝賀花火でした。
「そんな話聞いてな〜い!」(我家にとって花火と雷情報は非常に重要なので欠かさずチェックしています。夏場はベティの為、夕立を避け、ご飯時間も変更)私はとってもアセリました。
そう!お店ではブーボとキャサリンはともかく、『音響シャイ』べティがお留守番しているのです! いつもは「怖いものなし!アタイが一番」のベティですが、花火や雷のシーズンの夏はまさに受難の季節。
“パン”という音が聞こえただけで尻尾を丸め、人の側でジッとたたずみ全神経を集中し次の音を待ちます。
花火か?雷か?間違いか?を確認する為です。
次にまた“バン”とか、“ヒュー”とか聞こえようものならもう大変。途端にブルブル震えだします。
そうなるともう、どんなになだめても すかしても抱いてあげてもダメ。パパやママの言葉も耳に入りません。食事も大好物のおやつも一切効き目なし。
そんな余裕なんかないのです。
花火や雷が終わるまではまさにパニック状態。ハァハァ言いながら隅っこにいって床や段ボールを狂った様に掘りまくり、昨年はなんと、オシッコまで漏らすようになってしまいました。(もちろん、普段はトイレ以外でするなんて事しません。恐怖による失禁です。ベティの名誉の為、一応)山遊びなんかをしている時はベティが尻尾を丸めたら即リードをつけ車に戻ります。
どうやら雷は音で“聞く”ばかりでなく、“感じる”ようで、ゴロゴロが聞こえる15分位前には察知します。(ちなみに他の3頭は雷だろうが、花火だろうが、ぜんぜん平気です。)
そんな訳で病院にいる間、ベティのことがとても気になりましたが、店の中に居るわけだし震えてはいるだろうけれど大丈夫と思いながら大急ぎで帰りました。
ところが店に帰り「ベッちゃんごめんね怖かったでしょ〜」と声を掛けてもベティは出迎えません。床マットを掘った形跡があります。段ボールの影にでも隠れているだろうと狭い店内を探しましたがどこにもいないではありませんか!!
私はもう真っ青・・・いつもなら怖くてもパパやママが側に居ますから表に出る必要なんて全くないのですが、今回は頼れる人がいなかった為パニックになり、どうやら120センチの駐車場の柵を飛び越え、“ママの後を追ったようなのです!
ベティはその時、チョークチェーンのみで、鑑札も迷子札も着けていません。
今度は私がパニックです。とにかく一人ではどうにもならないと思い、(あいにくパパは仕事で不在でした。)親しくしていただいている犬仲間にべそかきながら応援を求めました。ありがたいことに皆さんすっ飛んで来て下さいました。
その後の動きは・・・。
●ベティがいつ戻ってきても良いように店に捜査本部(?)を設置。
● 土地カンのある人達が別れて捜索!逐一、本部に情報を入れる。
●もちろん、警察、保健所(時間外でしたが)動物保護施設に連絡。
●私は念のため、5キロ程離れた自宅に車をとばす!が、戻っておらず。
(再度行くがやはり居ない)
警察に「離れている大きな犬がいる」との通報が入ったとの情報を得、無理やり通報者のお宅を聞き出し行ってみるとなんと最初に探しに行った信用金庫の裏!
ちょっとの差で私と会えなかった事が判明!
(「そのうち家に帰るだろうから、そのままにしておいて」と警察は言ったそうです。“万が一保護しようとした人が噛まれたら大変”なので警察はそう言うそうです・・・。
もちろんベティはそんなことしませんが・・
見ていてくれた蘭丸のママが『ベッちゃん!!』と叫びました!!なんとそこには見知らぬ男性に連れられたベティがいました!
私は一瞬お礼を申し上げるのも忘れ、ベティを抱きしめました。
ベティは「へっへっ。ただいま〜。帰ってこられてよかった〜。ごめんなちゃい!心配おかけしました!」というかんじでした。
さてさて、親切なこの男性Mさんのお話にによりますと・・・
(1)ベティは東名高速入口近くの砧公園の側のKさんのお宅のお庭にいました。
(2)と、言うことはです。ベティはまず環状八号線を渡り、次に国道246号線を渡り(又は環8)、もう一度環状8号(又は246)線を渡ったあたりで保護されたことになるのです!
お近くの方は御存知と思いますがここは日本一 (!?)くらい交通量の多い道路です。道路を渡ったものか、歩道橋を渡ったものかは不明ですが、パニック状態の中でよく、車に轢かれなかったものです。
私は聞いただけでクラクラしました。
(3)Mさん夫妻は当時愛犬と暮らし、以前も何回か多摩川の花火大会で逃亡したワンちゃんを保護されたりしているとても優しい愛犬家です。 友人であるKさんはその事を御存じだったので、ベティをみてMさんに連絡して下さり、Mさんがベティを保護して下さいました。
花火も終了し、ベティは落ち着きを取り戻してはいましたが迷子札を着けていなかった為、どこの子だかわかりません。
そこで、翌朝警察や保健所に問い合わせをするために、体の特徴などを見てくださいました。歯がきれいなのでまだ若いだろう。でもお鼻はピンク。躾けはまぁまぁ?“お手”はしましたが
“お座り”はしなかったそうです。 (ベティって一応CD-X,T-CHなんですが・・)
(4)“耳”を見たところキレイだったので可愛がられてる子だと思われたそうです!
さぞ飼い主は心配してるだろうから なんとか今日中に帰してあげたいと考えて下さいました。
出して頂いた缶詰をペロリとたいらげたベティにMさんが「帰るかい?」と尋ねると「助けて下さってありがとうございます。花火のパニックも収まりましたし、ご飯も頂き
ましたので帰りたいと思います。家の者が心配していると思いますので・・・」と言ったかどうかはわかりませんが、 玄関のドアの方に向かったそうです。
(5) Mさんはリードをつけ、ベティの行く方向に向かって歩いて下さいました。(御自身ワンちゃんと暮らす方だからこそ出来た方法です!
夜10:00過ぎにこんなことをしてくださるなんて!なんて親切な方なのでしょう) 初めのうちは同じところを回ってたりもしましたが、近所の交差点のあたりからはハッキリしたらしく、Mさんを
店まで案内(?)したそうです。
翌日、夫婦で助けて頂いた恩人の皆さまにお礼に行きました。お陰様でベティも念の為の診察の結果、擦り傷くらいで車に当たった様子もなく元気に今に至っております。 |